こい

あるとき父の親しくしていた、教科書会社の社長さんが遺言に自分の大事にしている鯉を父に譲ると書いていたらしく、

全部というわけにはいかなくて、その中の特に立派な1っピキ100万するようなでかい錦鯉が2匹我が家にきた。

家に大きな池があって、井戸水をひいていたから私もよくそこで泳いでいた。

で、普通サイズの錦鯉が何匹かいた。

朝、鯉の餌をやるのは私の仕事だったから、眠い目をこすりこすり、えさの缶を持って庭に出て行き、えさをやろうと思って池をのぞくと、

ものすごく巨大な鯉が2匹いたわけだ。

びっくり仰天して、家にかけ戻り、大きな鯉が2匹いる!!

と大騒ぎ。

アーアレは、お父さんのお友達からいただいたのよー。

母は、わざといわないで、驚かしたのだ。

私はその立派な錦鯉にタローとジローという名を付けた。

もうかわいくって、暇があると一緒に泳いだ。

あるときには裸で。

猫みたいに足にすり寄ってきたり、足の間をくぐったり、私も持ち上げようとしたりずいぶん遠慮なくふれあっていたけど、タローとジローはいやがらなかった。

他の小さな鯉は、魚だったけど、あの巨大な2匹は、完全に友達だった。

その社長さんが本当にかわいがってた鯉だったらしい。

でも亡くなって、しばらくはほっとかれていて、そのうち穴あき病というのにかかってしまって、あわててうちにやってきたと、

今になってから聞いた話。

鯉はどのくらい生きるものなのか私には分からないけれど、確か、小学校1年生の時にうちにきて、

私が、山形の高校にいっていた間にタローとジローは死んだ。

それにしても、私は、鯉の餌が入っていた大きな缶を、何度落としたことか。

学校にいかなきゃ行けない時間はとっくにすぎているのに、母に怒られ、泣きながら、えさを拾ったり、

池の中に落として、えさを網で回収したり、何度やったことか。

鯉の大きな口が、足や手に吸い付いてくるあの感触。

昨日テレビで、鯉にキスしているおじさんを見て、急に懐かしくおもいだしたのだ。

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